研究概要 |
医薬品や生物活性天然有機化合物などの有用な有機化合物の構造上の特徴は、合成の食指を興奮させる骨格と複数の不斉炭素を持つ光学活性体が多い点である。これら生物活性低分子化合物の不斉炭素に直結する原子は、炭素、窒素、酸素、硫黄原子と多彩である。しかしながら、これら四大原子反応剤の不斉反応を、共通概念を基盤とした制御剤を用いて可能にした研究は極めて少ない。本研究では、これら四大原子を反応点とする反応剤とプロキラル炭素原子との不斉的な結合形成反応を可能にする、共通概念の構築を目的とする。平成21年度は以下の成果をあげた。 1.ジメチル亜鉛を開始剤とするエーテルラジカルのα,β-不飽和エステルへの共役付加-タンデム環化反応を開発した。 2.キラルジエーテル配位子制御によるリチウムアミドのα,β-不飽和エステルへの不斉共役付加-タンデムアルキル化反応による不斉4級炭素構築、ならびに本反応を鍵とする(-)-Aspidospermidineの不斉全合成を達成した。 3.アリールリチウムの不斉ダブルマイケル反応を鍵とする(-)-Lycorineおよび(-)-2-epi-Lycorineの不斉全合成を達成した。 4.イミンからアミドへのPinnick酸化反応を開発した。 5.キラルアミドボスファン-ロジウム触媒によるアリールボロキシンのN-ホスフィノイルイミンへの不斉付加反応を開発した。 6.キラルカルベン-銅触媒による不斉アリル位アリール化反応において、カルベン配位子の構造最適化を行い、高い位置選択性と立体選択性を両立させるカルベン配位子を開発した。
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