研究概要 |
医薬品や生物活性天然有機化合物などの有用な有機化合物の構造上の特徴は、合成の食指を興奮させる骨格と複数の不斉炭素を持つ光学活性体が多い点である。これら生物活性低分子化合物の不斉炭素に直結する原子は、炭素、窒素、酸素、硫黄原子と多彩である。しかしながら、これら四大原子反応剤の不斉反応を、共通概念を基盤とした制御剤を用いて可能にした研究は極めて少ない。本研究では、これら四大原子を反応点とする反応剤とプロキラル炭素原子との不斉的な結合形成反応を可能にする、共通概念の構築を目的とする。平成22年度は以下の成果をあげた。 1. キラルカルベン-金触媒による1,6-Enyneの不斉環化反応を開発した。 2. アセタールC-Hの活性化を基盤としたキラルスルフィニルイミンへのラジカル付加反応において不斉補助基の構造最適化を行い、最高95%ccで付加体を得ることに成功した。 3. リチウムエステルエノラート、キラルジエーテル配位子、リチウムアミドの三成分から成る複合化反応剤が不斉Michael反応において高い反応性、立体選択性を発現することを見出し、その構造をNMRにより確認した。 4. アルデヒドC-Hの水素引き抜きによるアシルラジカルの発生とその分子内共役付加反応を鍵として、(+)-Allokainic Acidの形式合成を達成した。 5. キラルアミドホスファン-ロジウム触媒によるイミンのアリール化において、トリフェニルボランを求核剤として用いることでイミンの加水分解が抑えられることを見出し、付加体を高収率且つ高エナンチオ選択的に得ることに成功した。
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