研究概要 |
医薬品や生物活性天然有機化合物などの有用な有機化合物の構造上の特徴は、合成の食指を興奮させる骨格と複数の不斉炭素を持つ光学活性体が多い点である。これら生物活性低分子化合物の不斉炭素に直結する原子は、炭素、窒素、酸素、硫黄原子と多彩である。しかしながら、これら四大原子反応剤の不斉反応を、共通概念を基盤とした制御剤を用いて可能にした研究は極めて少ない。本研究では、これら四大原子を反応点とする反応剤とプロキラル炭素原子との不斉的な結合形成反応を可能にする、共通概念の構築を目的とする。平成23年度は以下の成果をあげた。 1.不斉アリル位アリール化反応において最適な触媒系の探索を行った。前年度までに開発したキラルカルベン-銅触媒を構造修飾して立体的、電子的なチューニングを行ない、立体選択性と位置選択性の両方を高い次元で発揮する触媒の開発に成功した。 2.キラルアミドホスファン-ロジウム触媒によるN-ホスフィノイルイミンの不斉アリール化において、窒素上の置換基が立体選択性に与える影響を検討した。本反応における不斉誘起モデルの妥当性が裏付けられた。 3.トリエチルホウ素を開始剤とするイミンへのラジカル付加反応において、N-アルコキシカルボニルイミンが他のイミン類に比べ極めて高い反応性を示し、高効率的にラジカル付加が進行することを見出した。 4.キラルカルベン-金触媒による1, 6-Enyneの不斉環化反応において、触媒のX線結晶構造解析から触媒構造と反応の立体選択性との相関を検証した。結果、不斉環化反応におけるキラルカルベン-金触媒の設計指針となる知見を得た。
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