研究課題
小胞体Ca2+放出は多彩な生体機能に直接リンクしており、その破綻は各種疾患の原因ともなる。小胞体の荷電状態や浸透圧調節のために、Ca2+放出・汲み取り機構の背後にはK+やC1-の膜透過が推論されているが、その分子実体や機能の詳細は不明な点が多く、本研究では研究代表者が同定した2種の小胞体膜内在イオンチャネルであるTRICチャネルとミツグミン23 (MG23)に関する研究を立案した。平成20年度には、新生致死性を示すTRIC-B欠損マウスの解析を行い肺胞の機能不全を突き止めるとともに、精製したMG23タンパク質による脂質二重膜再構成系での単一チャネル計測実験などを遂行し、次年度の論文発表に向けたデーター再確認を現在遂行中である。研究代表者が同定したミツグミン53 (MG53)は、筋細胞表層膜直下のリン脂質小胞に特異的に発現する新規膜タンパク質である。その機能解析に向けて作成したMG53欠損マウスでは、進行性筋ジストロフィー様の症状が観察された。また、その変異マウス由来の筋細胞では、表層膜障害に対する膜修復機能が脆弱化していた。さらに遂行された細胞生理学的実験の成果から、MG53は膜損傷に伴う細胞外の酸化環境の流入に応じて、膜損傷部位にリン脂質小胞を集積させる機能を有することが示唆された。従って、膜修復機能の分子実体は現在不明であるものの、MG53はその機構を担う鍵分子であると結論された。
すべて 2009 2008
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