研究課題
小胞体Ca2+放出は、リアノジン受容体とIP3受容体の2種のCa2+放出チャネルにより仲介され、様々な細胞機能を制御することが知られている。しかしながら一方では、小胞体Ca2+放出の活性化、不活性化や生理的調節の分子機構、さらにはCa2+放出シグナルの時空間的多様性の発生機構やその情報が細胞機能に変換される機構には依然として多くの謎が残されている。本研究では小胞体より同定した一価陽イオン透過性TRICチャネルとミツグミン23(MG23)に注目した実験を立案した。2種のTRICチャネルサブタイプを高純度精製した試料を人工脂質二重膜に再構築した電気生理学的検討において、電位依存性を有するTRIC-AとCa2+感受性を示すTRIC-Bチャネルの電気生理学的性質を解明した。またTRIC-A欠損マウスの解析を進めて、その変異骨格筋においては小胞体Ca2+過剰負荷により異常収縮反応および小胞体膨潤化が観察されることも報告した。さらに、TRIC-A欠損マウスは高血圧を示すことも見出し、その変異血管平滑筋において小胞体Ca2+放出異常が生じていることも現在見出されている。これらの結果は、TRICチャネルが小胞体Ca2+放出と同調してK+を小胞体内腔に導くカウンターイオンチャネルとしての機能していることを強く支持するものと注目される。一方、MG23は小胞体膜上で多量体を形成することを化学架橋剤による実験により明らかになり、その立体構造やイオンチャネル活性の有無も注目されていた。精製試料による電子顕微鏡像の単粒子解析からはMG23はボウル様形状の粒子を構成しており、脂質二重膜再構築実験においては一価および二価陽イオン透過性チャネルとして機能し得ることが示された。新規イオンチャネルとして同定されたMG23の小胞体上での生理機能が今後注目され、遺伝子欠損マウスの解析実験を現在進めている。
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