研究概要 |
化学平衡を利用して標的分子に対して自動的・経時的に親和性化合物を構築する「化学進化的合成化学」の実証に関し以下のような研究成果を挙げた。 アルツハイマー症原因物質と考えられるアミロイドβ42のC末端構造であるVal-Ile-Alaを標的とし、scaffoldとして2,4,6-トリエチル-1,3,5-ベンゼントリアルデヒドを用いた。標的トリペプチドは、アガロースゲルに担持させ、アフィニティーゲルを作成した。このゲルとscaffold及び8種類のヒドラジドを共存させ、プロトン触媒により平衡反応を行った。十分平衡に達したと考えられる時間を経て、ゲルを洗浄後、Val-Ile-Alaを含む水溶液で溶出してきた化合物を同定した。その結果、2種類の縮合化合物と考えられた。これらは、現在のところ得られた量は微量であるがVal-Ile-Alaとの高い親和性が期待できる新規化合物であり、意義は大きい。今後化合物の量を得ることでITCにより親和性を明確に評価する予定である。 次に、異なる標的として、抗マラリア標的となるヘムを選び、可変部位はアミン類を用いて、上記と同様のscaffoldで平衡反応を行った。HPLCで解析した結果、ヘムの有無で生成物パターンは変化し、ヘムの存在により増加した生成物は10^4M^<-1>オーダーの結合定数を有し比較的強いヘム親和性を示した。一方、減少が見られた生成物は低い親和性を有していることもわかり、これまでと異なる標的においても化学進化的合成化学が方法論として有効であることが実証され、一般性を高める結果が得られた。
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