研究概要 |
化学平衡を利用して標的分子に対して自動的・経時的に親和性化合物を構築する「化学進化的合成化学」の実証に関し以下のような研究成果を挙げた。 本年度は、まず、昨年度得られた化学平衡反応によって生成量の増加が認められた生成物と標的化合物であるアミロイドβ末端ペプチドとの親和性について、高感度熱量滴定法(ITC)により、親和性を求め、一定の結合定数を有するものであることが確認できた。また、抗マラリア薬開発の標的分子であるヘムに対する本方法の適用により得られた平衡生成物は、ITCにより比較的高い親和性が確認でき、それらについてさらにin vitroでの抗マラリア活性を検討したところ、従来の抗マラリア化合物とはかけ離れた構造を有しているのにもかかわらず、IC_50=2.5x10^-7Mと、比較的高い抗マラリア活性を有していることがわかった。これらは、構造様式が新しいため、抗マラリア薬の新たなリード化合物になると考えられる。 これまでのScaffoldであるトリアルデヒド体を用いると、可変部位がヒドラジド体の場合、平衡生成物の水溶性が一般に乏しく、沈殿が生じやすい問題があった。そのため、今年度は水溶性を高める官能基を付加させた類縁体の合成を検討し、これまでの1, 3, 5-トリエチルベンゼンを修飾していく合成手法とは、全く別の方法論を採用し、有機金属触媒を用いた同時に3カ所のC-C結合形成反応により、前駆体までを一気に合成する方法を見いだした。
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