研究課題/領域番号 |
20249007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
那須 正夫 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (90218040)
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研究分担者 |
高木 達也 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (80144517)
谷 佳津治 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (50217113)
岩本 朋忠 神戸市環境保健研究所, 微生物部, 技術職員 (70416402)
山口 進康 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (20252702)
馬場 貴志 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (20423121)
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キーワード | 環境改変 / 感染症 / 結核性マイコバクテリウム / 水環境 / 遺伝的多様性 |
研究概要 |
微生物学と疫学、バイオインフォマティクスを総合し、環境改変にともなう感染症の出現機構を解明することを目的として、非結核性マイコバクテリウムを例として以下の研究を行なった。 1) 水環境および生活環境における非結核性マイコバクテリウムの動態解析を行なうために、定量的PCRの条件を最適化した。その結果、病原性非結核性マイコバクテリウムとして臨床上重要とされるMycobacterium avium、M.intracellulare、M.kansasiiを種レベルで定量可能とした。 2) 呼吸活性をもつマイコバクテリウムを特異的に検出するために当研究室で開発した蛍光二重染色法、および最適化した定量的PCR法を用いて、住環境中の非結核性マイコバクテリウムの動態を解明した。その結果、マイコバクテリウムは浴室、台所の排水口に高い割合で存在し、いくつかの地点においては活性をもっていた。米国では、水道水中の残留塩素濃度の基準が日本と比較して高濃度に設定されており、M.aviumはシャワーヘッドから検出されるのに対し、本研究では風呂釜と浴槽をつなぐパイプ中のみでしか検出されなかった。 3) M.avium臨床分離株の遺伝学的特徴について遺伝的多様性の観点から精査した。その結果、わが国では欧州諸国からの報告とは異なり、ヒト分離株とブタ分離株の遺伝的相同性は低く、ブタ感染個体のヒト感染への影響は極めて限局的と考えられた。また、浴室環境分離株とヒト臨床分離株の遺伝的相同性は高かった。 ヒトへの暴露という観点から浴室環境がM.aviumのリザーバーとなる可能性を確認した。また、日米間の比較により、水道水中の残留塩素がM.aviumの生残に影響を与えている可能性が推察される。すなわち、「水道の整備に伴う塩素消毒→塩素耐性をもつ非結核性マイコバクテリウムが生残→感染症の出現」というつながりが考えられる。
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