研究課題/領域番号 |
20249018
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
谷口 直之 独立行政法人理化学研究所, システム糖鎖生物学研究グループ, グループディレクター (90002188)
|
キーワード | 糖鎖 / 糖鎖サイクル / 糖鎖機能 / 細胞膜受容体 / 糖ヌクレオチド / グルコサミン転移酵素 / オルガネラ |
研究概要 |
本研究は糖タンパク質のN結合型糖鎖の分岐がもつ糖鎖機能を、糖代謝、糖ヌクレオチド、糖転移酵素、細胞膜受容体糖鎖などの各ステップを統合的に捉えることにより、その生理的意義を明らかにすることを目的とする。細胞膜受容体上の糖鎖は極微量でかつ多様な構造を有することから、その構造解析に際し、簡便かつ高感度な解析法が必要である。本年度は細胞由来糖鎖の構造情報を簡便に捉えるため、細胞由来総タンパク質画分からPVDF膜上でN結合型、O結合型糖鎖を順次遊離・回収して、キャピラリーLC-MSにより構造解析する方法を立ち上げた。膵臓β細胞株(インスリノーマ)と肝癌細胞をモデルに糖鎖パターンを比較したところ、インスリノーマではシアリル化糖鎖の含量が少なかった。また膵臓β細胞株ではUDP-GlcNAcの分解経路すなわちCMP-NeuAcの合成系が遅く、CMP-NeuAc輸送体やシアル酸転移酵素の発現量に差が認められないことから、その遅いUDP-GlcNAcの分解系が律速で糖鎖構造に影響を及ぼしていることが予想された。また糖尿病条件下の膵臓β細胞株においてヘキソサミン経路や解糖系のUDP-GlcNAc合成経路が亢進していることも確認した。 高感度な糖鎖構造解析法としては、3-アミノキノリン/CHCAの液体マトリックスを用いる糖鎖のオンプレート標識法とMALDI-MS測定法を立ち上げ、細胞膜受容体糖鎖の構造解析に向けた適用可能性を評価した。血管内皮スカベンジャー受容体SREC-1上を発現したCHO細胞を樹立し、3カ所の糖鎖修飾部位を同定、各々の糖鎖構造と機能を検討した。各付加部位の糖鎖がリガンドとの結合、膜輸送、プロテアーゼに対する抵抗性に関わっていることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではGlcNAcサイクルの各ステップを解析するシステムが必要であり、現在までで主要な解析基盤が整った。更にGlcNAc転移酵素の酵素間の活性調節や、UDP-GlcNAcとの協調的な制御を既に見い出しつつあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
既に確立した糖ヌクレオチドの定量法の高感度化を行い、これまで測定することが困難であった糖ヌクレオチド輸送体の機能やゴルジ体における消費速度の計時的測定を試みる。更に、これらの確立されたシステムと得られた結果をもとに、バイオインフォマティクスによりGlcNAcサイクルの統合的理解を進める。
|