がん抑制遺伝子PTENは種々の腫瘍でDNAレベルでの変異よりも蛋白レベルでの発現低下や消失が圧倒的に多いことから、今後はPTEN蛋白制御機構に関する研究が急務である。しかしながらこれまでにPTENの安定性・活性・局在制御に関わる分子の報告は非常に少ない。 平成20年度に我々は以下の事項を明らかにした。 (1)PICT1はこれまでの報告通りPTENを安定化させるものの、その他にもPICT1の欠損はp53の発現過剰をもたらすこと、またPICT1欠損マウスは受精直後に致死となること、さらにPICT1のT細胞特異的な欠損マウスはDN3以降のステージの細胞が激減し、またこの現象はほぼp53に依存性であること。(2)我々がPTENと結合することを見出したPBP1は核に主に発現し、細胞質にも発現すること、PBP1はPTENの脂質ボスファターゼ活性を充進させ、PTEN依存性に細胞死・Aktの活性抑制を伴うこと、またPBP1の抑制はAktの活性充進と細胞死抵抗性をみること、(3)さらに酵母ツーハイブリッドスクリーニングにより新たなPTEN結合分子約40種類を同定したこと、(4)メラノサイト特異的なPTEN欠損マウスは頻回脱毛による白髪抵抗性を示し、化学発がんに対する感受性が充進すること、マクロファージ特異的なPTEN欠損マウスではTNF産生の低下からレイシュマニア菌を殺菌する能力が低下していること、などをこれまでに見出した。 以上のように研究は順調に進行している。
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