研究課題/領域番号 |
20249022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深山 正久 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70281293)
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キーワード | EBウイルス関連胃癌 / EBウイルス / 胃癌 / エピジェネティクス / LMP2A / トランスジェニックマウス / マイクロRNA / エクソソーム |
研究概要 |
EBウイルス関連胃癌におけるエピジェネティック異常:胃癌手術検体51検体をイルミナ社Infiniumで解析し、約14、500遺伝子のCpG部位のメチル化を定量的に検討した結果、これまでの定性的な検討から提案していた我々の仮説を実証することができた。すなわち、メチル化を示す遺伝子群によって、胃癌は低メチル化胃癌(n=17)、高メチル化胃癌(n=23)、EBウイルス関連胃癌(n=11)の3群に分類され、後二者では胃癌共通メチル化遺伝子群に加え、両者に共通の遺伝子群、さらにEBウイルス関連胃癌では特異的遺伝子群にメチル化が生じていた。さらに、胃癌細胞株を用い、EBウイルス感染により上記のグローバルなメチル化亢進状態を再現できることを実証した。 LMP2Aに関しては、LMP2A過剰発現NIH3T3細胞株でサイドポピュレーション(SP)細胞が増加することを見出した。また、H^+K^+-ATPaseプロモーターを用いたLMP2A胃発現トランスジェニックマウスを長期飼育すると、頻度は低いが浸潤胃癌が発生し、胃癌組織のLMP2A発現、DNMT1発現亢進が確認できた(未発表)。今後、さらにLMP2A+/+マウスでの観察を行うとともに、胃癌発症マウスとの交配により十分な解析ができる実験系を確立し、胃粘膜の変化を継時的に追跡する予定である。 EBウイルス関連胃癌におけるマイクロRNA異常:今年度はEBウイルス自身のマイクロRNAに着目して研究を進めた。EBウイルス関連胃癌組織を用い、EBウイルスDNAに由来するマイクロRNAが産生されていることを確認した。また、EBウイルス感染胃癌細胞株では、これらのマイクロRNAが細胞外にも存在すること、おそらくエクソソームとして放出されている可能性を見出した。エクソソームを介して癌微小環境中の免疫細胞の機能を制御している可能性について検討を進める予定である。 (連携研究者:宇於崎宏准教授、牛久哲男助教、日野るみ助教、篠崎綾助教、坂谷貴司自治医科大学医学部准教授)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
グローバルなDNAメチル化解析を用い、胃癌細胞株へのEBウイルス感染によりメチル化元進を再現できることを実証した。メチル化機序解明への確実な土台を築いた。さらに、LMP2Aトランスジェニックマウスにおける胃癌発生を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
二つの実験系を用いて、エピジェネテック異常の分子機序を解明する。網羅的shRNAによる遺伝子発現低下と感染系を組み合わせることによって、メチル化亢進が抑制を受ける分子(メチル化亢進の責任分子)を同定する。LMP2Aトランスジェニックマウスと胃癌発症モデルマウスとの交配により短期間に十分な解析ができる実験系を確立し、LMP2A下流で機能する分子を同定する。
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