研究課題
平成20年度の研究実績について報告する。平成20年度は主に、初年度に得られた知見を基に共生細菌と上皮細胞並びにM細胞、絨毛M細胞の相互作用について解析を進めた。M細胞特有の糖鎖修飾構造であるα1,2-フコース将異的に結合するレクチンUEA-1で小腸上皮細胞を精査したところ、十二指腸側の絨毛ではUEA-1陽性細胞がほとんど観察されなかったのに対し、回腸部位ではほとんどの絨毛上皮細胞がUEA-1陽性であった。これらの上皮細胞の形態を電子顕微鏡にて観察したところ、典型的なM細胞や絨毛M細胞とは異なり、吸収上皮細泡と同様に規則的な微絨毛を有しポケット構造は見られなかった。これらのフコシル化上皮細胞の分布は腸内細菌の数鍬と相関する事から、腸内細菌刺激とフコシル化上皮細胞誘導の関係を調べるために、無菌マウス並びに抗生物質処理マウスを作成し解析したところ、フコシル化上皮細胞は完全に消失していた。これらの結果から、フコシル化上皮細胞は腸内細菌依存的に誘導される事が明らかとなった。また、様々なノトバイオートマウスの解析結果から、腸内細菌のうち回腸上皮細胞層に最優勢であるSegment filamentous bacteriaが、フコシル化上皮細胞を誘導する細菌の一つとして同定された。一方、これら回腸部位のフコシル化上皮細胞の抗原取り込み能を無菌マウスの上皮細胞と比較して解析したところ、フコシル化上皮細胞の方が病原細菌であるSalmonlla typhimuriumの取り込みが有意に上昇した。さらに、十二指腸と回腸め粘膜圃有層に存在する免疫担当細胞を解析したところ、特にB細胞、T細胞が回腸部位に多く集積されていた。以上の結果は、腸管における腸内細菌誘導性の新しい抗原侵入口の同定と共に、それらの細胞による免疫制御機構の存在を示唆する重要な発見と言える。
すべて 2008
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