抗原取り込み細胞として知られているM細胞は、その亜集団も含め、1)パイエル板・孤立リンパ小節といった誘導組織の上皮層にのみ存在する濾胞被覆上皮(Follicle-associated epithelium:FAE)-M細胞、2)絨毛上皮層に存在し、FAE-M細胞と相同の形質を示す絨毛M細胞、3)誘導組織と実効組織の両方の上皮層に存在するM-like細胞に区別される。効率的・効果的な粘膜免疫応答の誘導をちえた場合、FAE-M細胞を標的とした抗原送達系の構築が望まれる。我々は昨年度までに、FAE-M細胞の膜表面に特異的に発現する分子の一つとしてGP2を同定し、それに対するモノクローナル抗体を樹立した。今年度は、経口ワクチンモデルを用いてこの抗体の抗原送達系における効果を検討した。可溶性抗原である破傷風類毒素(tetanus toxoid; TT)をアビジンービオチン法により抗GP2抗体と結合させた経口ワクチンを作製した。これを週1回、計3回マウスに経口投与し、最後の投与から1週間後に血清と糞便を採取して、それぞれに含まれるTT特異的IgGおよびIgAをELISA法により定量した。その結果、TT結合抗GP2抗体の経口投与により、TT特異的糞便中IgAの産生のみならず、血清中IgG産生に関しても強い誘導効果が認められた。今後はこの抗体がさらに経口免疫寛容の誘導効果を有するかを検討していく予定である。 また、昨年度までにDNAマイクロアレイ法を用いた網羅的な遺伝子解析によって、小腸組織においてM細胞特異的と同定された細胞内タンパク質のノックアウトマウスの作製を開始した。この分子の完全ノックアウトマウスはすでに作製されており、胎生致死であることが報告されていたため、コンディショナルノックアウトマウスの作製を行った。定法に従い変異アレルを有するES細胞クローンを樹立した。このクローンを胚盤胞ヘマイクロインジェクションで移入し、現在キメラマウスの誕生を待っている。
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