我々はSTAT3がオーガナイザー領域において活性化され、原腸陥入時の細胞運動を統御することを明らかとし、そのときのSTAT3の標的遺伝子として亜鉛トランスポーターZip6を同定した。ついで、亜鉛が樹状細胞にてTLR信号の細胞内シグナル分子として機能してその活性化制御に重要であること、マスト細胞へのFcεR依存性の細胞外刺激に伴って粗面小胞体付近から遊離亜鉛濃度の上昇が短時間で起こる事(亜鉛波)を明らかにした。このような背景の中、我々は、1)細胞内亜鉛シグナルの普遍性を確立すること、2)その分子機構を確立すること、3)亜鉛や、亜鉛シグナルの免疫反応や各種生体反応、また、免疫病や各種病気における役割を明らかにするとともに、その作用機構を分子のレベルで明らかにすることを決意した。本年度は以下の4つの研究を行って結果を得たので以下に報告する。(i)GFP融合分子ライブラリーを用いた亜鉛信号関連分子の同定:先年度までに1200個あまりの遺伝子をスクリーニングした結果、1つの遺伝子産物が細胞に亜鉛添加後、核から細胞質領域に移行することがわかった。この分子の会合分子を細胞株にてshRNAを用いてノックダウンすると亜鉛依存性の核外移行が抑制された。現在本核外移行の分子メカニズムを検討している。(ii)マスト細胞における亜鉛波の機序の解明:亜鉛波の発生があるチャネルの阻害薬およびshRNAによってにて抑制された。論文投稿準備中。(iii)STAT3への亜鉛結合部位をCD法等を用いて検討している。結合部位の個数を決定してその後その結合に必要なアミノ酸を同定する(iv)Zip14分子のマウス生体でのノックアウトにて骨に異常が見つかりそのメカニズムにcAMP信号伝達系が関与していることが判明した。論文投稿中。
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