研究課題
本研究は、医療の質・安全学会、日本病院団体協議会等主要な医療団体が連携して推進する医療安全全国共同行動で取り組む介入によって回避可能な死亡が低減するとの仮説の下で、リスク因子を調整した入院死亡数、死亡率の評価方法を考案し実質的な死亡数変化を推計・評価すると共に、有志病院の協力を得て、肺塞栓防止、危険手技安全対策、院内救急体制構築等介入ごとのパフォーマンス指標を設定および測定し、対策の効果(諸般の制約がある実際の医療現場でどれだけ有効性を発揮できるか? )を実地に検証することを目的とする。初年度は以下の事項を実施し、下記の知見を得た。1) 2008年5月に全国共同行動が発足。各行動目標について推奨する安全対策(介入)のハウツーガイドと支援ツールを作成した。2) ベースライン・データとして、推奨する対策に関する実施度(4段階で自己評価)と昨年度の月別病院死亡数のデータを収集した。3) 米国医療の質改善研究所の指標チームと可避死の低減を評価する方法について協議するとともに病院死亡率のリスク調整の方法についてレビュー調査を行った。その結果、現段階では、英国のプライアン教授らが開発したHSMR(標準化病院死亡比)が適切と結論し、英国における適用の実態を調査するとともに、日本の実情に即じた測定方法について検討を行った。4) 英国では改善の取り組みの効果を測る手段の一つとして活用されているほか、主要疾患群別標準化死亡比(SMR)が改善機会を特定する上で有効とされていた。5) 日本でHSMRを活用するにあたって考慮すべきデータの特性や外部影響因子について検討を進めた。その結果、(1) DPCの導入に伴って在院期間の短縮と末期ケアの外部化が進み死亡場所がシフトする傾向にあり、地域全体の傾向を勘案する必要がある、(2) 疾患構成の日英の差異によるバイアスを避けるために上位80%を占める死因疾患を対象とするロジステック回帰分析を行って日本版HSMRを策定する、(3) 既存データでは救急入院、緩和ケアなどの因子の組み込みや除外が難しく、これらがどの程度影響するかについて別途に分析が必要と考えられた。
すべて 2009 2008
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EB NURSING Vol.9 No.1
ページ: 98-102
EB NURSING 9(1)
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Resuscitation 80
ページ: 359-364