研究課題/領域番号 |
20249036
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
乾 賢一 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (70034030)
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研究分担者 |
桂 敏也 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10283615)
増田 智先 京都大学, 医学研究科, 講師 (90303825)
米澤 淳 京都大学, 医学研究科, 助教 (90452341)
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キーワード | 薬学 / 薬剤反応 / メタボリックシンドローム / 薬物トランスポータ |
研究概要 |
最終年度には、ヒトにおいてメタボリックシンドローム治療薬メトホルミンの体内動態における有機カチオン輸送系の遺伝子多型の影響を検討した。腎臓からの排出を司るH+/有機カチオンアンチポータMATE1およびMATE2-Kの変異をヘテロで有する患者において、野生型と比べて排泄速度に有意な差は認められなかった。また、ノックアウトマウスを用いた検討でも同様に、ヘテロ型では差は観察されなかった。従って,MATE1もしくはMATE2-Kの半分程度の機能低下は、メトホルミンの体内動態への影響は小さいものと推察された。一方、多変量解析の結果、クレアチニンクリアランスが有意な相関因子として抽出された。クレアチニンは糸球体濾過に加え尿細管分泌を受けるカチオン性小分子であることから、有機カチオン輸送系の機能を反映するバイオマーカーになる可能性が示唆された。他方、MATE1の機能低下は、白金系抗がん剤シスプラチンの腎臓からの排出を抑制し、腎毒性を増強することが明らかになった。MATE1は様々なカチオン性薬物を輸送することから、MATE1の機能変動が多くの薬物の体内動態や毒性発現に影響を与えると考えられる。 さらに、肝摘除術を施行された患者の余剰検体を用いて、肝臓に発現する主要な薬物トランスポータの発現プロファイルを作成した。薬物トランスポータの中で、OATP2B1が高発現しており、OCT1、OAT2、OATP2B1などが高い発現を示した。また、MRP4はHCV感染が発現量の規定因子となることが明らかになった。 以上より、ヒトにおける体内動態や発現解析等から、遺伝子多型や発現量変動が薬物トランスポータの機能特性を規定し、個体差を決定するひとつの要因になると考えられる。
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