研究概要 |
平成20年度は、9社13事業所の追跡調査を実施することができた。当初予定していた1社2事業場は、急激に悪化した経済環境により受け入れ態勢が整備できず、21年度実施に変更となった。検査項目は、全事業所で呼吸器影響である従来の項目(呼吸器系自覚症状、高精度胸部CT(HRCT)撮影、スパイロメトリー、KL-6、SP-D、SP-A)えお測定し、一部の事業所では、他の臓器への影響をモニタリングするために腎機能(血清クレアチニン、尿素窒素、尿中β2-ミクログロブリン、NAG)、肝機能(AST, ALT, LDH, GGT)、内分泌機能(血清テストステロン)、遺伝子障害性指標(8-OHdG)を測定した。 インジウム曝露指標である血清中インジウム濃度はゆっくりとした低下傾向にあり、動物実験で示されたように人でも生物学的半減期が長いことが示唆された。間質性肺障害指標であるKl-6は明らかな低下傾向を示し、異常所見率は大幅に低下し、インジウム濃度の減少に先立って生体影響は回復の方向に向かうことが示唆された。HRCTによる間質性変化・気腫性変化の所見に大きな変化はなく、新規にインジウム肺が疑われる作業者は発見されなかった。また、呼吸器影響以外の指標には、正常からの偏りは検出されなかった。 2カ所のリサイクル事業所では、作業環境および曝露濃度測定を実施することができ、測定が専門の研究協力者(十文字学園女子大学田中茂教授のグループ)により測定が実施された。1事業所は2度目の測定であり、前回と比較すると大幅な改善が認められた。 1カ所のインジウムリサイクル企業とスパッタリング装置洗浄企業を新規に把握し、リスクコミュニケーションを実施し、調査協力の約束をいただいたが、前者は最近の急激な経済状況の悪化により協力を得られない可能性が出ている。
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