研究概要 |
我々は症例発掘及び時間断面疫学研究を実施し、インジウム曝露と間質性肺炎の因果関係をほぼ確立した。現在、北は秋田から南は鹿児島に至る21社25工場・研究所で追跡データを収集し、不可逆性であるインジウム肺の間質性・気腫性肺障害の予後等の情報を得ることを主たる目的として、コホート研究を継続実施している。 平成21年度は、山形~福岡県の5社9工場で調査打合せ、追跡調査実施、結果報告及び最新の情報に基づくリスクコミュニケーションを実施した。検査項目は、全事業所で呼吸器影響である従来の項目(呼吸器系自覚症状、高精度胸部CT(HRCT)撮影、スパイロメトリー、KL-6、SP-D、SP-A)を測定し、一部の事業所では、他の臓器への影響をモニタリングするために腎機能(血清クレアチニン、尿素窒素、尿中β2-ミクログロブリン、NAG)、肝機能(AST,ALT,LDH,GGT)、膠原病に関連する因子(ANA,RA)を測定した。インジウム曝露指標である血清中インジウム濃度はゆっくりとした低下傾向にあり、KL-6も下降傾向にあったが、SP-Dはむしろ増加傾向を示し、インジウムによる呼吸器障害におけるKL-6とSP-Dの意義付けが異なる可能性が示された。腎機能等呼吸器以外の障害の指標については、特段異常は検出されなかった。 第二のインジウム消費産業となりかけている太陽電池製造工場については、コンタクトを試み調査協力を依頼しているが、実現に至っていない。 また、5月に開催された日本産業衛生学会総会時に第3回目のインジウム健康影響情報交換会を実施し、約25社の参加を得た。
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