研究概要 |
我々は症例発掘及び時間断面疫学研究を実施,し、インジウム曝露と間質性肺炎の因果関係をほぼ確立した。現在、北は秋田から南は鹿児島に至る21社25工場・研究所で追跡データを収集し、不可逆性であるインジウム肺の間質性・気腫性肺障害の予後等の情報を得ることを主たる目的として、コホート研究を継続実施している。 平成22年度は、5月に開催された日本産業衛生学会総会時に第4回目のインジウム健康影響情報交換会を実施し、約25社の参加を得た。疫学調査としては、山形~福岡県の3社5工場で調査打合せ、追跡調査、結果報告及び最新の情報に基づくリスクコミュニケーションを実施した。検査項目は、全事業所で呼吸器影響である従来の項目(呼吸器系自覚症状、高精度胸部CT(HRCT)撮影、スパイロメトリー、KL-6、SP-D、SP-A)を測定し、一部の事業所では、末梢血を用いた遺伝子障害性検査、肝機能(AST,ALT,LDH,GGT)、CRPを測定した。インジウム曝露指標である血清中インジウム濃度はゆっくりとした低下傾向にあり、KL-6も下降傾向にあった。肝機能等呼吸器以外の障害の指標については、特段異常は検出されなかった。 9月には、US National Institute of Occupational Safety and Health(NIOSH,CDC)主催のIndium Workshopに招聘され、我々の研究成果を提示し全面的な支持と賛同を得た。8月~9月には、研究代表者、分担者、協力者2名の計4名+1名の計5名よりなる小検討会が厚生労働省に設置され、我々の研究成果を基に指針案が12月に「インジウム・スズ酸化物等の取扱い作業による健康障害防止に関する技術指針」(平成22年12月22日基安発1222第2号)として発効し、研究の成果が社会での実践に結実した。3月には、第5回情報交換会を予定したが、東日本大震災により5月に延期した。
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