研究概要 |
1.偽性低アルドステロン症II型(PHAII)におけるNCCのリン酸化の亢進は、WNKからOSR1/SPAKへの刺激に完全に依存していることをWNK4,OSR1/SPAKのトリプルノックインマウスの作成により証明した。WNKによりリン酸化される部位に変異を入れたOSR1/SPAKノックインマウスとPHAIIモデルマウスであるWNK4ノックインマウスを交配し、PHAIIの形質がこれらのトリプルノックインマウスでは完全に消失する事から、PHAIIの原因は、我々の発見したWNK-OSR1/SPAK-NCCシグナル系の恒常的亢進であることを証明した(JCS,Chigaら)。 2.WNKキナーゼの生理的制御因子としてインスリンを同定した。メタボリックシンドローム患者では塩分感受性高血圧症が見られることから、インスリンがこの系の制御因子であるかどうかを検討し、インスリンが生体内でも強力にこの系を活性化させることを示した(PLoS ONE,Soharaら)。 3.WNK3の腎臓での役割をノックアウトマウスを作成して解析した。腎臓において、何か主要なWNKキナーゼであるかを探るため、WNK3のKOマウスを作成し解析した。その結果、NCCのリン酸化に変化は無く、腎臓でのWNK3の寄与は少ないと結論した(Biol Open,Oiら)。 4.WNK4の腎臓内での詳細な局在を新たな抗体を作成して明らかにした。WNK4の腎内分布は遠位尿細管ではタイトジャンクションという報告があったが、新規の抗体を作成し解析したところそうでは無く、細胞内管腔側膜下であることが判明した(Histchem Cell Biol,Ohnoら)。 5.OSR1のコンディショナルKOマウスを作成し、腎内でのOSR1の役割を確定した。OSR1はKOマウスが致死のため、コンディショナルKOマウスを作成し解析したところ、OSR1はヘンレの太い上行脚に主として存在し、NKCC2のリン酸化に関わっている事が示された。その機能低下はバーター症候群を引き起こす可能性が示された(PNAS,Linら)。
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