生体における体液恒常性維持において腎臓は主要な役割を担っている。その機構が達成されるためには、生体の置かれた環境が変化した時、いかにしてそのシグナルがそれぞれのイオンや溶質の尿細管での輸送をつかさどる膜輸送体に伝わり、その機能を調節しているかを明らかにしなくてはならない。 本研究課題では、最近ヒトの遺伝性高血圧症「偽性低アルドステロン症II 型(PHAII)」の原因遺伝子であることが判明したWNKキナーゼについて検討する。我々はPHAIIモデルマウスの作成により、WNKキナーゼがOSR1/SPAKキナーゼを介して、腎臓でのNa-Cl共輸送体をリン酸化により制御していることを明らかにした(Cell Metab 2007 ).研究計画は全体を通して大きく以下の4つに分けられる。 1)WNK4からのシグナル伝達系を各種ノックアウトマウスを使用し検討する研究。 2)WNKキナーゼ周辺の分子ネットワークをWNK 結合蛋白を単離して明らかにする研究。 3)WNK4ないしその下流のOSR1/SPAKキナーゼの活性化因子を解明する研究。 4)WNK4以外のWNK、特にPHAIIを同様に引きおこすWNK1の役割を解明する研究。
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