研究概要 |
白血病、骨髄増殖性疾患(MPN)、骨髄異形成症候群(MDS)発症の分子メカニズムを解明するためにさまざまな角度から研究を行った。これらの実験を通じて白血病、MPN、MDSを含む造血器腫瘍を統合的に理解する。 1)転写因子AML1の変異体を利用したマウスMDSモデルにおいてプロモーター領域がメチル化されている遺伝子群を同定したところ、p57Kip2, Gata5, Myod1, Sall1など癌で高メチル化が報告されている遺伝子群が含まれていた。 2)Bcr-Ab1を過剰発現させた骨髄細胞を移植することによってマウCMLモデルを作製した。Hes1とBcr-Ab1を同時に発現させるとブラストクライシス(CML-BC)様の病態を呈すること、実際のCML-BC患者でも40%でHes1の過剰発現が認められることを明らかにした。 3)転写因子C/EBPαにはN末とC末の2種類の変異があり、患者白血病細胞ではそれぞれの変異を別の遺伝子座に有する症例が多い。我々は2つの変異体が協調して白血病発症を誘導することをin vitroおよびon vivoの実験で明らかにした。またクラスI遺伝子変異として知られているFLT3-ITDはC/EBPαのC末変異体と協調して2週間以内に白血病を誘導することからC末変異体はクラスII変異様の働きをすることが示唆された。 4)AIDを導入すると遺伝子突然変異が誘導される。そこで骨髄細胞にAIDを過剰発現し移植すると胸腺腫あるいはB細胞腫瘍を発症することが判明した。腫瘍における変異を調べたところ、胸腺腫ではc-mycやNotchにB細胞腫瘍ではEbf1とPax5に変異が導入されており、このことがリンパ系腫瘍の発症に関与したことを示唆した。
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