研究課題
カルボニルストレスの治療可能性について検討するために、重症度との関連を解析した。外来症例は入院症例より有意にpentosidine濃度が低かった(P=0.006)。縦断追跡が行おれた入院患者10例のうち退院した5例では全例が退院後にpentosidineが低下し(P=0.008)GLO1活性が上昇していたが(P=0.04)、退院できなかった症例ではこうした変化は認められなかった(精神神経学会2011)。抗精神病薬の影響を除外するために初発未服薬の症例でAGEsを検討してきた結果、21歳の男性で前駆期症状を認めるARMS(At Risk Mental State)症例でカットオフ値を大きく上回るpentosidine上昇(>100ng/ml)を認めた。この症例は精神療法とマイナートランキライザーの投与後、PANSSに有意な改善を認め(P=0.001)、カルボニルストレスが消失した(<55.2ng/ml)(Arai et al. Psychiat Clin Neurosci 2011)。AGEsの低下と症状改善の関連が示唆された。そこで昨年度、AGEs抑制作用を持つ活性型ビタミンB6(pyridoxamine:国内未承認)を用いた第1相試験を行い1800mg/dayで有効血中濃度(AUCO-24>46μg-hr/mL)に到達し、有害事象も認めなかった。そこで、今年度は松沢病院入院中の10例を対象に医師主導治験を開始した(Medical Tribune Pro 11月2日、11月14日)。精神科での医師主導治験は初めてであり、未承認薬の医師主導治験は全科を通じて日本初の試みである。
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