研究概要 |
膵島移植はこれまで主流であった膵臓移植に比し、安全・簡便・低侵襲といった多くの利点を備えた患者に優しい画期的治療法であるため、欧米の一部では既に保険適応となっている。しかし、移植効果の予見が極めて困難である事や、効果を発揮した場合においても現状では一人の患者の治癒に複数ドナーを要するという課題を有しているため、ドナー不足が深刻な本邦においては一般医療に至っていないのが現状である。この課題を解決するため、本研究においては膵島の活性・機能を迅速かつ的確に診断できるデバイスの開発、及びそのデバイス活用による革新的膵島分離システムの構築を目指している。H22年度は、H21年度に作製した呼吸活性測定用デバイスを改良し,ガラス基板に3本の測定用微小電極を固定し,その上に逆円錐型のPDMSウエルを接着させた改良デバイスの作製を試みた。このデバイスを用いて、膵島のモデルであるマウス培養胚の呼吸活性測定を行ったところ、従来法と相関性の高い結果を得ることができた。また,3本の電極で胚サンプル表面の局所酸素濃度を計測し,その値を平均化することにより,サンプルの配向や極性を排除し,信頼性の高い測定値を得られることが判明した。このシステムの活用により、小動物モデルにおいては移植後の膵島グラフト機能を評価する事が可能である事も判明した。これらの結果をふまえて、今後は、送液機構とソフトウェアの至適化によるより実用的なシステム構築を目指し、確立した移植前膵島評価法の有用性に関する臨床探索試験の実施を試みることが示唆された。
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