研究概要 |
膵島移植はこれまで主流であった膵臓移植に比し、安全・簡便・低侵襲といった多くの利点を備えた患者に優しい画期的治療法であるため、欧米の一部では既に保険適応となっている。しかし、移植効果の予見が極めて困難である事や、効果を発揮した場合においても現状では一人の患者の治癒に複数ドナーを要するという課題を有しているため、ドナー不足が深刻な本邦においては一般医療に至っていないのが現状である。この課題を解決するため、本研究においては膵島の活性・機能を迅速かつ的確に診断できるデバイスの開発、及びそのデバイス活用による革新的膵島分離システムの構築を目指している。H23年度は、H22年度までに確立した呼吸活性測定装置の操作性、スループット向上を目指し、微細加工技術を利用して石英ガラス基板上に微小電極を配置し、微小組織導入用ウェル,保持用チャンバー,測定溶液リザーバーを集積化する新規システムを構築した。このシステムは,微小電流の測定部および制御部,解析ソフトウェア,多検体セルから構成され,膵島6サンプルの呼吸量測定を15分以内に実現できることが可能であり、臨床応用に十分可能であることが確認された。今後は、膵島のみに限局せず、微小生体組織全体対象とし、開発システムの全自動化を試みる。本研究にて確立した移植前膵島評価システムは、今夏より再開される高度医療制度下における膵島移植の多施設共同臨床試験において、実際の臨床現場で応用を試みる予定である。
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