研究課題
臨床情報が明らかで、病理学的解析の行われている約180症例の外科切除標本の癌組織、非癌部組織を用いてcDNAアレイを行った結果、致死的再発に関わる遺伝子として細胞分裂に必須であり、ゲノム不安定性に関与する分裂キナーゼAurora kinase B(ARKB)を同定した。患者予後及び致死的再発に関する因子を臨床病理学的事項を含めて解析した結果、ARKBがもっとも有意な独立因子であった。本遺伝子の発現と臨床標本の免疫染色の結果は有意な相関を示した。さらにvalidation testにおいても同様に有意な遺伝子であることが検証され、肝細胞癌のもっとも重要な予後因子である門脈浸潤に深く関わることも判明した。さらなる解析の結果、ARKB高発現症例ではゲノム不安定性を有していることがCGHマイクロアレイで確認された。このような機能を有するARKBを高発現することにより癌細胞はaggressivenessを獲得するものと推察された。以上の結果はARKBが分子標的になりうることを示唆するものであり、製薬メーカーとの共同研究によりARKB阻害剤による肝細胞癌治療の前臨床試験を行った。その結果、本阻害剤がヒト肝癌細胞株の増殖をARKBの発現に相関して抑制すること、ARKBの作用であるクロマチンタンパク質ヒストンのリン酸化を阻害すること、細胞核分裂が生じるにもかかわらず細胞質分裂を阻害し、細胞死に至らせることなどが明らかとなった。そしてヌードマウスを用いた肝癌細胞株xenograftモデルにおいて腫瘍増殖を抑制することが示され、新しい分子標的薬としての応用が期待された。以上、本研究において肝細胞癌のaggressivenessに関わる遺伝子が同定された。今後、新たなる分子標的治療へと展開したい。
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