ラット遅発性神経細胞死における網羅的分子動態解析 神経細胞の虚血脆弱性・メカニズムを解明することを目的とする。新たなアプローチとして質量顕微鏡法を用いた分子imagingにて、ラット全脳虚血モデルを用いて遅発性神経細胞死に至る海馬における分子動態変化の解析を行った。経時的にCA1領域の神経細胞死、グリオーシス、炎症等を病理組織学的に評価・解析した。これに対比して、質量顕微鏡法による分子imagingにてリン脂質の分子動態変化を解析した。CA1領域特異的にPosphatidylcholine(PC)(16:0/18:1)、LysoPC(16:0)、Ceramide(18:0)が経時的に増加し、PC(18:0/18:1)、Sphingomyelin(SM)(16:1)は経時的に変化がないことが示された。またCA1の神経細胞層特異的にPC(16:0/16:0)やSM(18:0)が経時的な増加が示された。細胞死の過程で海馬において細胞膜の主要構成成分であるリン脂質が脂肪酸組成により異なる局在を示したことから、リン脂質の生理活性がアポトーシスや炎症反応等に関与することが示唆された。 ラット脳梗塞モデルにおける炎症マーカーの同定と検証 脳虚血ストレス下におけるMKP_1(Mitogen activated protein Kinase Phosphatase-1)の発現・調節を検証した。MKP-1 mRNAは虚血ストレス導入後、急性期より虚血側大脳半球において特異的に発現上昇が認められた。発現はischemic coreよりもむしろ虚血遠隔部の皮質に強く発現が認められた。発現は1時間から3時間にかけてピークを認め24時間から3日にかけて負荷前と同程度にもどった。またMKP-1 proteinは虚血辺縁部を中心として認められ、急性期においてneuronに発現していた。MKP-1は虚血ストレスに対対するbiological responseの強度及び持続時間を調節することによりストレス応答の調節を行っている分子ではないかと考えられた。
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