研究概要 |
本研究では、雌性生殖器官における成体幹細胞システムの基礎的解明をさらに進めていくと同時に、多角的な臨床応用を目指して、成体幹細胞を用いた疾患モデルの構築、およびSP法に拠らない新しい幹細胞分離法の確立を通じて、幹細胞を標的にした雌性生殖器疾患に対する治療法の開発を目的とする。 まず、我々の既報の内膜症モデルマウス(Masuda, et al., PNAS, 2007)を用い、再構築内膜組織における幹細胞の同定をlabel retaining cell (LRC)法と増殖マーカーにより行った。その結果、生体同様、内膜-筋接合部に特に増殖の盛んな細胞が集積していた。しかしLRC細胞は十分に検出されず、BrdU投与の時期や量など検討を要することが判明した。 一方、SP法に拠らない新しい幹細胞分離法として、まず子宮筋幹細胞について検討したところ、子宮筋細胞のなかでLin(CD31, CD45, Glycophrin A)陰性かつCD34陽性/CD49f陽性細胞(Lin-/Double Positive Cells; Lin-/DPC)が幹細胞特性を有することが判明した。具体的には、Lir-/DPCのみがSP分画を含んでおり, in vitroで骨・脂肪・軟骨細胞へ分化した。また、我々の既報(Ono, et al., PNAS, 2007)では、子宮筋幹細胞は低酸素で効率良く増殖したが、Lin-/DPCも同様に低酸素で高い増殖効率を示した。さらに、重度免疫不全マウスへの子宮への移植実験では、in vivoでヒト子宮平滑筋様の組織を構築し得た.このように表面抗原による新しい方法で単離されたLin-/DPCが組織幹細胞特性を有することから、本法を他の雌性生殖器官幹細胞の分離・同定・機能解析に応用することが可能となり、次年度に向けての重要な基盤データが得られた。
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