研究概要 |
本年度は、主にヒト雌性生殖器官幹細胞を用いた疾患モデルマウスの作製とその解析を目指した。まず、我々が確立したヒト内膜組織再構成系モデル(Masuda, et al.,PNAS,2007)は、疾患モデルのプロトタイプになるが、その問題点として、従来法は、腎実質を貫通させて腎被膜下へ細胞移植をするため、高度な技術を要し、実験者によって再構成率にバラツキが生じていた。今回、コラーゲンゲルと極細の軟性チューブを用いることにより一定の割合の再構成率を安定的に得ることに成功した。本技術を用いて子宮腺筋症モデルを作製すべく、発光蛋白でそれぞれマーキングした子宮筋細胞と子宮内膜細胞を混合して移植し、1ヶ月後にバイオルミネッセンスイメージングを行ったところ、子宮筋細胞単独に比べて混合移植では強い発光シグナルを認め、その組織再構成を非侵襲的リアルタイムに確認した。腹腔子宮内膜症モデルとして、以前に発光蛋白でマーキングした内膜細胞を腹腔内に投与したが、シグナルの発光強度および発光場所が定まらず、生着場所の不安定性に起因することが示唆された。そこで、移植細胞を1カ所に集積すべく、発光蛋白でマーキングした移植細胞に磁性を持たせ、外部から磁場をかけたところ、ほぼ単独の発光シグナルに加えて、1カ所に集積した再構成組織をマクロで確認し得た。さらに、幹細胞マーキングと磁性体を用いたその分離・選別を目指したベクターの構築を行ったところ、蛍光蛋白、発光蛋白、および非機能型細胞表面受容体の三者を発現することが可能なレンチウイルスベクターを得ることが出来た。以上、本年度は、疾患モデル構築のための基盤となる材料、技術、および知見が得られた。
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