研究概要 |
本研究では,4年間で100症例の難治性根尖性歯周炎症例より根尖孔外バイオフィルム試料を採取するとともに、感染根管症例から根管内バイオフィルム試料を採取し、それぞれの試料について既に確立した遺伝子解析法によりバイオフィルム細菌を同定後その構成比率を解析する予定である。本年度は,数症例のバイオフィルムサンプルより,16S rRNA遺伝子を増幅し,プラスミドライブラリーを作製した。現在,シークエンサーにより細菌を同定中である。一方で,研究代表者らが根尖性歯周炎の難治化に強い関連性があることを報告したPorphyromonas gingivalisを用いて,バイオフィルム系と浮遊系で発現遺伝子を経時的に解析し,その発現遺伝子の相違を検索するため,まず各増殖過程における浮遊系のP.gingivalis細胞の遺伝子発現を検索した。誘導期,対数期,静止期,死滅期のそれぞれの過程で,数種の遺伝子において発現強度が異なり,その中には他の細菌種でバイオフィルム形成との関連が示唆されている遺伝子が含まれていると推察された。現在,マイクロアレイ法に必要なゲノムDNA量を回収するため,バイオフィルム形成モデルに改良を加え,その採集量の確認実験を行った上で経時的にDNAを抽出し,遺伝子をプロファイリングすることにより,浮遊系のP. gingivalis細胞で強発現していた遺伝子との関係を検索中である。 他方で,根尖性歯周炎罹患歯の60根管に対し,感染根管治療時の拡大終了後にEr:YAGレーザーを照射し,その有用性を細菌学的および組織化学的に評価した。レーザー照射群42試料において,照射前には15試料から細菌が同定されたが,照射後はその内9試料では細菌が検出されなかった。照射前に検出された平均細菌数は37.7CFU/根管で,照射後も細菌が検出された6試料の平均細菌数は1.7CFU/根管で有意に低下した。また,非照射の1サイズ拡大後の試料の細菌数に比べ,照射後の残存性細菌数は,有意に低かった。これらより,根管内へのレーザー照射は,残存細菌の有効なコンドロール法の1つであることが示唆された。
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