研究課題/領域番号 |
20249082
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
野口 俊英 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50014262)
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研究分担者 |
小島 俊男 浜松医科大学, 実験実習機器センター, 准教授 (00311340)
森田 英利 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (70257294)
林 潤一郎 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (30350937)
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キーワード | メタゲノム解析 / 口腔細菌叢 / 歯周病関連細菌 / 歯周炎 / ゲノムDNA抽出 |
研究概要 |
平成22年度は、21年度までに終了したものに加えて、健常者歯肉縁上プラーク2サンプルの塩基配列を決定し、最終的に健常者歯肉縁上プラーク3サンプル、疾患歯肉縁上プラーク2サンプル、疾患歯肉縁下プラーク2サンプルの合計7サンプルで再度解析を行った。プラーク細菌の系統解析では、過去の報告より多い合計996の細菌種が検出された。また、プラークにおいては主要な7つの門が96~99%を占め、ヒト腸内細菌叢よりも複雑な細菌構成をしている可能性が示唆された。いわゆるRed complex菌群はこれまでの報告通り疾患サンプルで多い傾向にあったが、Aggregatibacterについては、疾患サンプルでも検出数は少なかった。機能特性についてはサンプル間において高い類似性がみられた。このことから、プラークの状態に関わらず口腔の環境に適応するための必須な機能が維持されていることが示唆された。また、今回のデータセットにおいて予測された遺伝子の60%以上が機能不明であったことも、この類似性に影響していると考えられる。ヒト腸内細菌叢、海洋細菌叢との機能特性比較を行ったところ、明確な違いが確認された。糖代謝に関する遺伝子については、腸内、口腔細菌叢に多く観察された。防御機構に関する遺伝子も腸内、口腔細菌叢に多く、遺伝子の水平伝播などにより抗菌薬の分解や排出などの機能が増強している可能性が高い。ヒトは、口腔内や腸内など体の各部位において細菌との共生関係を構築し、それぞれの生物学的機能を発揮しながら、お互いの機能を補い合っている。今回の研究成果により、従来の手法では判明しなかった口腔細菌叢の特性が明らかになった。これは、疾患の原因としての口腔細菌の作用を解明するだけでなく、ヒトと口腔細菌の生態的関係とそれによるヒトの生理機能への影響を知る手掛かりとなるもので、重要な基礎データといえる。今後サンプル数を増やすとともに、機能不明の遺伝子も対象に含めた解析を行う計画である。
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