本研究の目的は、Cinta Laut号を駆使することによって、インドネシア、スラウェシ島周辺の離島群を対象として、そこの自然と人々の営みを記載し、それらの情報に基づいた「スラウェシの離島群の自然誌」を作成することにある。これら離島群は、熱帯林に覆われていて、多様な動植物相が見られ、かつ、海・森の特性を生かした生業形態が存在し、資源利用・管理に関する生態智の宝庫になっている。しかしながら、今までアプローチの困難性から未調査に終っていた。 本研究の特徴の一つは、自然の記載をする専門分野を強化・配置していることである。植物・昆虫の分類記載や森林生態の分野が参画し、島という限定された空問において完成度の高い記載を目指した。なお、当初予定された藻類分類、魚類分類は諸般の事情から20年度は取りやめている。また、人間の営みに関しては民族植物、森林利用、漁労活動、木造船づくりの各分野が配置し、精緻な観察・インタビューを通じての調査を行った。こうした極めて基礎的な手法・分野が結集して離島群の自然誌を描くための基礎資料が収集されている。平成20年度は、中部スラウェシ州のトギアン諸島、ゴロンタロ州ワルタボネ国立公園周辺に焦点を当てた調査を実施した。森の動植物相の把握は永益(植物分類)、Wahyudi(森林生態)、Atus(植物分類)、山根(昆虫分類)が、自然を利用する人々の営みに関しては、竹田(森林利用)、落合(民族植物)、赤嶺(海洋民族学)、長津(生業形成)、遅沢(木造船づくり)がそれぞれの専門からの記載を担当した。なお、作成された実物標本は、ゴロンタロ大学に保管する予定であったが、同大の体制が整っていないため、目下、各研究者の手元に保管され、同定作業が進行中である。なお、対象域のオランダ語文献(Goedhart 1908)の英訳が実施された。
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