研究課題/領域番号 |
20251006
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤井 純夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90238527)
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研究分担者 |
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
桂田 祐介 名古屋大学, 博物館, 研究員 (40456710)
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キーワード | ヨルダン / 新石器文化 / ダム / 遊牧 / 移牧 |
研究概要 |
年度当初に掲げた二つの具体的目標のうち、ワディ・アブ・トレイハ遺跡の補足調査は、2008年の8〜9月に実施した。これによって、1) ステップの中で運営された小型移牧拠点に二種類の水利施設(貯留式灌漑用のダムと飲料水供給用の貯水槽)が伴っていたこと、2) ダム・貯水槽の埋没・放棄時期と隣接移牧拠点の廃絶時期がほぼ一致すること、3) 埋没後の貯水槽が短期的なキャンプに再利用されていること、などの重要な事実が明らかになった。これらの事実は、先土器新石器文化B末から進行し始めたとされる大規模な乾燥化の過程で、ダムを用いた貯留式灌漑農耕が維持できなくなり、その結果、貯水槽および移牧拠点が放棄・廃絶されたことを、示唆している。重要なのは、埋没後の貯水槽に短期キャンプする集団がいたことである。この集団こそは、固定的移牧拠点の維持・運営を放棄した移牧民、すなわち最初の遊牧民、と定義できるであろう。だとすれば、移牧拠点における灌漑農耕の盛衰こそが遊牧化の直接的契機となったという本研究計画の仮説的展望が早くも立証されたことになる。初年度にこうした確信を得たことは、大きな成果である。 なお、もう一つの目標であるヨルダン南部ジャフル盆地における移牧拠点および付属ダム遺構の分布調査は、目標1に多大な時間・労力を費やしたため、まだ実施できていない。これについては次年度前半に集中的に実施し、遅れを取り戻す予定である。
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