研究課題/領域番号 |
20251006
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤井 純夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90238527)
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研究分担者 |
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
桂田 祐介 名古屋大学, 学生相談総合センター, 研究員 (40456710)
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キーワード | ヨルダン / 新石器文化 / ダム / 遊牧 / 移牧 |
研究概要 |
計画二年次の本年は、本調査に向けた最終準備段階と定義される。そのため、ジャフル盆地(ヨルダン)における新石器時代水利遺構の分布調査と、ワディ・ハッジャーナ1遺跡(シリア)の試掘調査を実施した。 9月に実施したジャフル盆地の分布調査では、これまでに確認していた新石器時代の水利遺構7件の構造・年代などを再点検した。その結果、定住農耕文化圏に近い集落遺跡の水利遺構は単純な堰だけで構成されているのに対して、周辺乾燥域の移牧拠点遺跡では大型の地下式貯水槽や貯留式灌漑用ダムが併存することが判明した。これによって、移牧拠点の維持運営にとって各種の水利施設が不可欠の要素となっていたこと、だからこそその衰退が遊牧化につながったと考えられることが、改めて確認された。 なお、この時の踏査では、3件の新たなダム遺構も確認した。このうちの1件(ワディ・クワイールWadi Quwayir)には小型の集落が伴っており、移牧または遊牧り拠点であったと考えられる。次年度からの発掘調査に備えて、遺跡周辺の等高線測量を実施した。 一方、年度末の3月に実施したワディ・ハッジャーナ1遺跡の調査では、ジャフル盆地と同様に、新石器時代小型集落に伴う、ただし天然のダム・貯水槽の存在が明らかになった。本年度は、等高線測量図の作成と試掘調査を実施した。その結果、小型の竪穴住居が検出された。 以上2件の事前調査によって、バーディアット・アッ・ジャーム(広義のシリア砂漠)の南北両端で、乾燥地水利遺構の盛衰と遊牧化との相関関係を具体的に追跡する体制が整った。次年度以降、本格的な発掘調査に移行する予定である。
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