研究課題/領域番号 |
20251007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
泉 拓良 京都大学, 文学研究科, 教授 (30108964)
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研究分担者 |
南川 高志 京都大学, 文学研究科, 教授 (40174099)
清水 芳裕 京都大学, 文化財総合研究センター, 准教授 (90127093)
冨井 眞 京都大学, 文化財総合研究センター, 助教 (00293845)
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キーワード | レバノン考古学 / 地下墓 / ローマ時代 / 呪詛板 / ディオニュソスマスク / 初期キリスト教 / ティール / ギリシア文字碑文 |
研究概要 |
今年度、レバノンでは、昨年度発見し発掘調査したラマリ地区地下墓TJ10の発掘調査を継続した。この地下墓がラマリ地区最大級の地下墓である事を明らかにし多くの遺物を発見した。出土遺物から見て地下墓TJ10は紀元後2世紀後半に掘削され、3世紀に増築され、4世紀まで使用されていた可能性が高い。 今回の最大の成果は、紀元後3世紀に作られた鉛製呪詛板(14.7cm×6.0cm)の発見である。内面には約1100文字のギリシア文字と記号群が54行にわたりびっしりと刻まれていた。内容は、呪詛者が牛追い達との金銭トラブルに巻き込まれ、彼らを黙らせようと神々に依頼したものと思われる。ユダヤ教的な要素も見られるが呪詛者はキリスト教徒であり、初期キリスト教徒の当時の様子を垣間見ることができる。 呪詛板の他に、年代を決定できるコインやランプの他、陶製棺、ガラス容器、土製マスクや青銅製鈴などが出土した。特に、土製マスクは重要で、花と葡萄の房との髪飾りをつけたディオニュソスを表したマスクが6面出土した。同様のマスクは古代テュロスの墓地であるアル・バース地区の石棺からも出土していて、ラマリ地区墓地の性格を知る上で貴重である。本年度でこの地位での発掘調査を終了した。 チュニジアで予定していた遺跡景観・建築・文献調査は内乱のため調査を中止し、レバノン本土に変更した。ただし来年度日本で開催する国際研究成果発表・討論会に招聘するチュニジア人研究者との交流をおこなう。スペイン、イタリア、レバノンの研究者とも連絡を取り、国際討論会の準備を進める。 平成21・22年度の地下墓TJ10発掘調査概要と平成21年度の研究概要について報告書を印刷した。また、平成22年12月8~14日に京都大学総合博物館で鉛製呪詛板の特別展示をおこない、1000名を超える有料入館者があった。
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