研究課題
本研究の目的は、古代パルミラ墓の現地での調査・研究を通して古代パルミラ人の葬送儀礼や死生観を社会背景とともに理解することである。調査を実施している家屋墓はパルミラ博物館の西約100m、パルミラ都市遺跡の北側に接するように営まれ、No.129-bと呼ばれる有力氏族の墓である。2009年度は、崩れ落ちた石材の状況を3次元レーザー実測システムによって計測し、倒れこんだ家屋墓石材の隙間や周辺に堆積した土砂の除去、精査をおこない埋葬施設の検出に務めた。その結果、石棺以外の主要な埋葬施設は床下に存在することが明らかになった。家屋墓床面中央部には角柱・各梁で囲まれた一辺約3.2mの方形の空間が設けられていた。床面下の基壇内部の中央にも墓室内部と同様の方形柱で囲まれた方形の空間が存在した。それは葬祭殿(No.86)にも認められるため、比較調査として葬祭殿の基壇下の3次元計測をおこなった。基壇内部埋葬施設の入口は基壇の南面に設けられ、マグサ石には2行のギリシャ語の碑文が刻まれていた。家屋墓を取り込んだ城壁の建設のための作業用斜路には数多くの乳児墓が設けられ、乳児墓は土器棺、土坑墓、シャフト墓、石囲い墓からなる。現在まで17基の乳児墓が調査され、15体が1歳未満であり、最高齢は2.5歳である。乳児墓埋葬についてはさまざまな考えが出されているが、パルミラのこの場合は城壁建設の早期竣工・安全祈願もしくは敵(ササン朝ペルシャ)対する勝利祈願が考えられる。また、家屋墓周辺の土壌堆積に地震痕跡の堆積が認められた。また、東南墓地C号墓建造者ヤルハイの彫像と複顔との顔付きの比較をおこなうために彼の頭骨のコピーを作成した。
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平成21年度考古学が語る古代オリエントー第17回西アジア発掘調査報告会報告集 17
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第16回ヘレニズム~イスラーム考古学研究 16
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日本西アジア考古学会第14回総・大会要旨集 14
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古代オリエントの都市遺跡-日本調査隊の活躍-日本西アジア考古学会・天理参考館共催公開セミナー要旨集
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Environ Health Preventive Medicine 14
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