本研究は、20世紀末から影響力を増してきた国際的なイデオロギーとしての「先住民」概念を中心に、このような国際世論と、国家の少数民族政策の影響のもと、少数者である彼らが近代国家の枠組みの中で、どのように主流社会と交渉し、自己のアイデンティティを構築していくのか、その動態を明らかにすることを目的とするものである。本研究の特徴は、世界各国の少数者を専門とする調査者が、オーストラリアを比較調査対象とし、変化する国内的状況と国際的世論のダイナミクスの中でのアボリジニの対応、交渉について調査を行なう。その知見を持って自己の調査地を改めてみつめなおすことにより、先住民と国家、国際社会という三者間関係について、広い視野からの深い洞察が得られることになると考えている。 本計画は5年間であり、以下の4つの部分から成り立っている。 (1)これまでオーストラリアを専門としてきた研究者による、現在の変化とアボリジニの対応についての研究 (2)世界の他地域の少数者を専門としてきた研究者による、オーストラリアの状況についての比較調査 (3)オーストラリアでの知見を踏まえた上でのそれぞれの専門領域での調査 (4)国際研究集会、および国際ワークショップでの、海外研究者との議論を通して得られる複眼的な視点これら以上、4つの成果を統合して、最終的な知見につなげる予定である。
|