研究課題/領域番号 |
20252002
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
唐 亮 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (10257743)
|
研究分担者 |
木村 幹 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (50253290)
石塚 迅 山梨大学, 教育人間科学部, 准教授 (00434233)
稲垣 文昭 慶応義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究講師 (80468545)
渡辺 剛 杏林大学, 総合政策学部, 准教授 (90338012)
島田 弦 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80410851)
|
キーワード | 体制移行のコスト / 民主化の定着 / 植民地の遺産としての制度 / 二重移行 / 中産階級の役割 / 社会的亀裂 / 経済の自律性 / 市民社会の育成 |
研究概要 |
平成21年度は計3回の研究会を開催し、体制移行の比較研究に関する中間成果の発表を行った。分担者の各自の研究成果を踏まえながら、共通の研究作業を通して以下の3点に関して共通認識を得ている。第1に、インドの経験を中心に植民地遺産説が提起された。特に、インドは経済発展水準が低いにもかかわらず、植民支配から引き継いだ官僚制、文民統治、司法制度などが民主政の維持に寄与した。同様の傾向はマレーシアなどからもある程度観察される。ただ、なぜ、パキスタンのような国がそうならなかったかを含めて、他の条件と合わせて考える必要がある。第2に、社会主義国家の体制移行は2重移行の課題をどう処理するかという特殊な課題である。通常、民主化は政治体制の移行を意味する。社会主義国家は民主化と市場経済化といった2つの課題を同時に抱える。しかも、社会主義経済体制の下では、行政、経済(企業)、社会の運営は中央の指令に頼り、自主性、自律性が極めて弱い。政治の混乱が縦と横の命令系統を通して行政、企業の運営、社会の秩序に及んでいく恐れが大きい。経済移行と政治移行のどちらかを先行するか、または同時進行させるかに関する移行戦略の選択は中国と旧ソ連・ロシアの相違を解釈する重要な視点である。第3に、民主化に関する中産階級の二重性である。中産階級は教養、情報のアクセスなどから、意識の面においては民主主義との親和性を持ちながら、社会地位、経済利益を重視して安定志向が強い。民主化支持に踏み切る前に、中産階級は社会改良、政策の改善などに力を入れる。マレーシアと中国、スハルト時代のインドネシアはその傾向が強かった。
|