今年度は、ドイツ・ポーランド間に横たわる「歴史問題」の現状を把握し、その紛争の解決策を展望するための基礎的な作業を行った。まず、このテーマに関する研究状況をおさえる意味で、ドイツにおけるポーランド研究の現状を鳥瞰することができた。また、現実政治とより密接に関わらせて、ドイツ・ポーランド共通歴史教科書のプロジェクト進捗状況についての知見を得た。さらに、本研究プロジェクトで最大の眼目としている、歴史意識をめぐる世論調査に向け、さまざまな機関との検討を経て、まずは、オポーレ(ポーランド)に本拠をもつ、ドイツ系少数民族のNGO「ドイツ・ポーランド協働の家」を通じて、第二次世界大戦後もドイツに追放されなかった在ポーランド・ドイツ系住民の意識調査を行うことで、先方との合意にこぎつけた。この調査の結果を受けて、さらにポーランド・ドイツそれぞれで、より大規模な歴史意識調査を行うべく、新たな調査パートナーの開拓にも力を注いだ。他方で、大阪で開かれた「第2回東アジア・ドイツ史会議」において、韓国・中国のドイツ史研究者と、ドイツにおける歴史意識の揺り戻し現象をどう捉えるのかについて、率直な意見交換を行う機会をもった。なお、本研究プロジェクトに対して、川喜田敦子・東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター特任准教授から、恒常的な参加が得られることとなり、ほぼ毎回、研究上の打ち合わせに同席していただくことができた。
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