研究課題
縮減社会を迎えたわが国においては、人間や情報の流動性の高まりを背景としたドライビングフォースが新たな社会空間構築の手がかりとなるという仮説をもとに研究を進めた。本研究では、EUの「スペーシャル・プランニング」を対象に、「シティー・リージョン」と呼ばれる新たなスケールをもつ計画の枠組みについて比較検討するため、EU各国における現地調査を実施し、自治体の都市計画担当者・コミュニティ・民間まちづくり組織へのヒアリングの成果をもとに、1)「シティー・リージョン」の概念、2)社会とガバナンス、3)計画の機能、4)計画行為が有する力、の4点から詳細に分析することを目的とした。昨年度は欧州各国のスペーシャル・プランニングやシティー・リージョンの概念について整理したが、本年度はスイス国内事例を対象として詳細な現地調査を行なった。スイスは九州より一回り大きな国土が26の州に分けられているが、伝統的に州単位での自治意識が強く、政治レベルでは自治体を超えるようなスペーシャルプランニングの取り組みにスピード感が見られなかったが、近年になって「国家都市政策」が発表され、連邦レベルでのスペーシャル・プランニングの必要性が認識されつつあり、2012年には連邦スペーシャルプランニング法の見直しも予定されている。一方で、民間レベルでは、国際競争力の高い金融業や製薬産業などを中心とした特異な産業構造を背景に、社会経済的側面から要請されるストラテジーを空間計画へと展開するダイナミックなスペーシャル・プランニングの取り組みが見られた。調査の成果は前年度成果と共通のプラットフォーム上に整理し、社会、政治、経済、環境といった様々な与条件との関連について詳細に分析し、わが国の諸事例との比較を行った。
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disP-The Plannig Review, ETH Zurich
巻: 181・2/2010 Volume46 ページ: 100-105
日本建築学会計画系論文報告集
巻: 658 ページ: 2845-2853