研究課題/領域番号 |
20254006
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上北 恭史 筑波大学, 芸術系, 准教授 (00232736)
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研究分担者 |
花里 利一 三重大学, 工学研究科, 教授 (60134285)
稲葉 信子 筑波大学, 芸術系, 教授 (20356273)
松井 敏也 筑波大学, 芸術系, 准教授 (60306074)
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キーワード | プランバナン / インドネシア / 世界遺産 / 震災復旧 / 組石造建造物 / ヒンドゥー教 / ジョグジャカルタ / シバ祠堂 |
研究概要 |
本研究は、世界遺産プランバナン遺跡群のプランバナン寺院の被災した建造物の全体的な復旧を視野に入れて石造建造物のモニタリングと遺跡保護のための空間マネジメントについて調査を進めた。研究は、次の調査領域に基づいて実施された。(1)地震による破壊メカニズムの詳細解明と保存工学的修復手法の検討、(2)過去の修復手法・技術および地震に関する情報収集と分析,(3)被災した文化遺産に関する保護の体制、について調査を行った。またこれらの研究成果についてインドネシア遺跡保存専門家たちと意見交換を行い、地震によって被災したシバ祠堂の修理方法について意見交換を行った。 これらの調査項目に従って次のような結果が得られた。 (1)シバ祠堂の常時微動測定とクラックモニタリングを実施し、地震による卓越振動数と常時微動振動数の差異から、ひずみ依存性による剛性低下の影響が推定された。また観測期間中、2008年12月31日および2010年9月13日に二つの地震波が観測されたが、どちらも亀裂変異に変化は現れなかった。地震発生時においても亀裂変異の変動が見られないことから、シバ祠堂の構造体は現時点で安定していると判断された。(2)2010年1月に行われたオランダでの文献調査では、ヒンドゥー・ジャワ美術の小写真データベースは作成されていることがわかったが、シバ祠堂の修復工事報告書・修復の図面・写真については、祠堂の内部構造を知るには十分とはいえるだけの資料が残存していないことを確認された。(3)遺跡公園を観光客の多くは、2時間の滞在時間にロロ・ジョングラン寺院に集中する傾向がある。シバ祠堂以外の5基の祠堂はすでに修復を終えて、落下した石材は元の場所に戻されているが、同様に地震に対し落下防止の措置は採られていない。先の地震被害の成果は、観光客のマネジメントには反映されておらず、安全性を担保した修理・復旧のための基準づくりが求められる。
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