野生状態で絶滅したタヒ(モウコノウマ)がヨーロッパの動物園からモンゴルに「里が帰り」したことは快挙といってよいが、その復帰地となったフスタイ国立公園ではタヒが順調に回復すると同時にアカシカも増加し、公園の環境収容力とのバランスの問題が生じる可能性がある。そこで初年度としてタヒとアカシカの食性比較をするために両種の糞を公園の関係者の協力を得て回収した。サンプルは2種について3箇所で毎月確保された。この分析はまだおこなっていないが、レファレンス標本などは確保したので、次年度分析ができる状況になった。これにより両種の食性が類似していれば、公園管理にとって重要な資料となる。 本計画ではタヒとアカシカに代表される草食ギルドとオオカミを含む肉食および腐食ギルドの内部構造の解析を目的としている。肉食・腐食ギルドにはオオカミ、キツネなどのほかワシ・タカ類も含む点がユニークである。これらの鳥獣の糞・ペリットは回収を始めたが当初は難航した。しかし冬になってポイントがはっきりしてからは数十のサンプルが確保された。これは2009年2月時点の情報であり、その後もサンプル確保は継続している。 平成20年度はサンプルの採取に最大の目標を設定し、草食ギルドについてはこれを達成できたが、肉食・腐食ギルドについてはおよそ半分ほどしか達成できなかった。ただし齧歯類などについてレファレンスがかなり充実したので、平成21年度はサンプリングを継続するとともに分析ができる体制がほぼ整った。
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