タヒとアカシカの資源利用については予定よりはやや遅れているが順調に調査が進み、群落利用ではタヒが草原を、アカシカが森林を利用することが明確に示され、糞分析によって食性はタヒが80%をイネ科、アカシカは50%をイネ科、30%を双子葉を採食していることが示された。また粗タンパク質含有率でもタヒよりもアカシカが有意に低いことが示され、全体としては2種で資源分割が実現していることが示された。一方、肉食ギルドはサンプル確保が困難であったために、オオカミとキツネ類(アカギツネとコサックギツネ)の比較しかできなかった。この2群間ではオオカミはほとんど哺乳類、キツネ類は昆虫と果実を主要な食物としており、冬のキツネ類では哺乳類が多少増加した。食べられていた哺乳類は、オオカミでは中大型であり、キツネ類では齧歯類であり、重複がなかった。オオカミは家畜を中心に採食していた。 このようにフスタイ国立公園では有蹄類も肉食獣も種間の資源分割がはっきりしていた。したがって現状では資源をめぐる種間競争は問題とならないと判断された。しかし次の2点が問題である。1)オオカミは公園内の野生動物ではなく家畜を主要な食物としており、これは公園と周辺の牧民との関係を考える上で問題となる。2)タヒが順子不に個体数を増加させているのは朗報であるが、生態系への影響を考えると、将来的には植生への過度な影響や、アカシカとの食料をめぐる競合などの懸念もある。 この研究は動物各栄養群の種間関係解明と公園の管理という保全生態学の双方で貢献する情報を得た。
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