研究概要 |
現地調査:本年度はトルコ,中国の主として内蒙古自治区およびネパールで現地調査を行なった。トルコでは7月初旬にアンカラ大学の協力を得て,本研究の新資料となるEphedra distachya, E.majour, E.campylopodaの3分類群を採集した。中国内蒙古自治区では8月中旬に北京大学齢学院と共同で中央部北部のモンゴル国国境付近を調査し,E.sinica, E.equisetina, E.przewarskiiなどを調査採集し,E.sinicaの分布西限を明確にした。ネパールでは9月中旬に中部ネパールのゴーキョ谷近辺を調査し,果実期のE.gerardianaを21地点で採集し,この地域にはE.pachycladaが分布しないことを明らかにした。 栽培研究:生育環境の違いとアルカロイド含量の相関を検討するまで,より信頼度の高い実験データを得るためにはクローン株を利用することが望ましい。そこで,本年度はとくに挿し木法によるクローン株増殖を検討した。これ迄の代表者らの研究では木質茎は比較的容易に発根するが,草質茎では困難であった。大量のクローン株を得るためには草質茎を使用することが有利であるので検討した結果,茎直径の太い株を使用すると発根率が高いことが明らかになったが,更なる検討が必要である。また,継続栽培しているE.sinica株が結実し,播種したところ発芽率が高いことがわかり,日本でも種子繁殖が可能であることが明らかになった。 多様性・種分類に関する研究:西部ネパールのカリガンダキ川上流域で採集したE.pachycladaと同定されてきた資料のDNA塩基配列を検討した結果,すべてE.intermediaとE.gerardianaの雑種由来であることを明らかにした。今後はその周辺に生育する植物を検討することにより,ネパールにおける本属植物の多様性が明らかになるものと期待される。なお,E.pachycladaの種分類に関しては,今後他国産の資料を検討するなどして分類学的な位置を検討する必要がある。
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