研究課題/領域番号 |
20255006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
濱田 穣 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (40172978)
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研究分担者 |
川本 芳 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (00177750)
丸橋 珠樹 武蔵大学, 人文学部, 教授 (20190564)
小川 秀司 中京大学, 国際教養学部, 教授 (80293976)
森光 由樹 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 講師 (20453160)
平崎 鋭矢 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (70252567)
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キーワード | マカカ属 / 進化地理学 / 分布 / 多様性 / 生態学的競合 / 遺伝子浸透 / 分散 / 系統発生 |
研究概要 |
今年度はアッサムモキー・ベニガオザル・ブタオザルを集中的に調査した。分布に関して、ミャンマー国ラカイン山地西部(高緯度)ではアッサムモンキーは見いだされたが、キタブタオザルとべニガオザルは見られず、緯度的棲み分けがあるかもしれない。ラオス南部で北緯15度近辺のボラーベン高地で見いだされた。タイ半島部南部でブタオザルの分布調査を行った。従来クラビ・スラタニー間の斜めのクローン・マールイ断層がキタ種とミナミ種の境界だと考えられていたが、キタ種はそれよりも南部で、ミナミ種が北部で見つかり、半島の脊梁山地と周辺山地で複雑な分布をし、地域によっては同所的に分布しているようだ。ラオス南部での調査から、キタブタオザルは基本的に広葉常緑林に棲息し、アッサムモンキーと競合すると推測されていたが、そこでは植生や地形などによって棲み分け、さらに前者は中緯度域(10-20度)では落葉フタバガキ林や二次林などの広い植生にも適応し、分布が広い。 アッサムモンキーとベニガオザルのロコモーションの特徴を明らかにした。歩行時、ニホンザルなど地上性の強いマカクでは手のひら全体でなく、指骨部分をつけるが、樹上性の強いアッサムでは、手掌全体をつけること、四肢の接地パターンの変異性が高い(後方交差型と前方交差型)ことが明らかにされた。 タイ北部でアッサムモンキーの捕獲調査を行い、尾長や体毛色などの分類学的特徴に関する形態学的データを得、アッサム亜種内での変異性評価やペロプス亜種との比較が可能になる。地理的にはあまり隔たっていないタ、イのピッサヌロック県とチェンライ県の集団の間で、遺伝的にかなりの分化が見られ、山地系の違いによる分散過程が反映されているのかもしれない。 ベニガオザルとアッサムモンキーの生殖行動の詳細が明らかになり、精子競争を有利に導く効果を持つ行動(シット・イン)が見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東南アジア大陸部に分布する5種マカクの分布パターンと形態学的・遺伝学的地理変異性、特に地形・植生との関係、同所性種の存在などの詳細、および身体移動運動や生殖行動や社会システムを記述し、それぞれの種の進化地理学を明らかにしつつある。タイ西部とミャンマー東部、およびミャンマー西・北部での調査が難航している。
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今後の研究の推進方策 |
キタブタオザルとアッサムモンキーの間、アカゲザルとカニクイザルの間の競合と棲み分けメカニズムの解明を目指し、チュオンソン山地系で詳細な調査を行う:1)ラオス南部の保護区で、詳細な分布調査;2)ベトナム中部でカニクイザルとアカゲザルの交雑過程の形態・遺伝調査。生殖行動と社会システムの関連性を比較調査で解明する。未踏調査地、特にタイの西・北地域での分布調査を行う。
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