日本人の形成史解明には、更新世から現在に至る間の大陸や周辺域との人の交流史の解明が不可欠である。特に懸案となっている渡来系弥生人や縄文人の源郷問題を解決することを目的として、以下の東アジア各地域の人類学的調査(形態、遺伝子、考古、同位体分析)を実施する。 (1)中国:弥生文化の主柱となった水稲農耕文化の伝播経路として関連分野から注目されている江蘇省~山東半島南岸域の占人骨調査、及び、青銅器文化の伝播と関連して注目される中国東北部の先史人類に関する調査(吉林大学所蔵の古人骨調査)を実施し、弥生時代の日本への渡来に関係した大陸の人と文化の動態を明らかにする。 (2)東アジア東北部(ロシア・モンゴル):ロシア沿海州・モンゴル東部の新石器~鉄器時代遺跡の発掘調査、及び両国の各研究機関所蔵人骨の調査によって、大陸北方と日本列島との人の交流、特にシベリア東部集団と縄文人との関係を明らかにする。 (3)東アジア南部 (1)先島諸島:資料空白域となっている先島諸島の先史時代遺跡の発掘調査を通して、日本列島とアジア南部との人の交流を明らかにする。 (2)台湾:台湾の先史時代人骨、及び土着原住民集団の資料調査によって、日本の更新世に遡る時期からの人の交流を追求する。
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