本研究では、南西アフリカの砂漠国であるナミビア北部地域に出現する季節性湿地帯に着目し、その水環境を改変することなく新規産業としての環境保全型粗放稲作を導入することを最終目的とする。具体的には、季節性湿地帯に開設するモデル水田の水環境を水文学的視点から精査し、水資源を枯渇させない水田開発を提言するとともに、湿地帯を代表する様々な水環境に適合したイネ品種群を提案し、さらに当地の貧農との協議の下でトウジンビエ栽培と融合するイネ栽培体系を村落開発の視点から構築することを当該研究期間内の目的とする。初年度の研究では、飯嶋と連携研究者の檜山、研究協力者の鈴木がナミビアに出張し、ボーエン比計測システムを、モデル水田、比較対照用の自然湿地と畑地に1基づつ合計3ケ設置し、蒸発散量データ測定を開始した。海外研究協力者のムワンデメレが来日し、今後の研究の進め方などを議論した。さらに、鈴木が11月に再度出張し、来年度5月まで約6ヶ月間の予定で現地に滞在する。その直前に日本側研究メンバー全員が集まり、研究実施を多角的に議論した。鈴木は出張期間内に、イネの品種選抜、貧栄養、乾燥、窒素利用効率に関する初年度のモデル圃場試験とポット試験を海外研究協力者のカニョメカ、ルインガらと運営するとともに、流域系の水のサンプリング調査を実施した。最後に、連携研究者の太田が出張し、ボーエン比計測システムの稼動状況を点検するとともに、研究協力者のカニョメカ、鈴木らとともに氾濫水の最終到達地点であるエトーシャ塩性湖の状況を視察した。なお、ナミビア国試験地のイネの蒸散速度や土壌・植物体サンプルの分析、さらに国内でのモデル試験での調査に必要な分析機器として、CNコーダ、ポロメータなどとともに、サンプルの貯蔵庫として大型冷蔵庫を主要な備品として購入した。
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