研究課題/領域番号 |
20255009
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅沼 修一 名古屋大学, 農学国際教育協力研究センター, 教授 (60159374)
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研究分担者 |
木村 眞人 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20092190)
星野 光雄 名古屋大学, 環境学研究科, 名誉教授 (40023626)
竹谷 裕之 名古屋大学, 産学官連携推進本部, 特任教授 (10023491)
佐々木 重洋 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (00293275)
桂田 祐介 名古屋大学, 学生相談総合センター, 研究員 (40456710)
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キーワード | 人間生活環境 / 保全農業 / 地域環境管理 / 地域文化 / ガリー侵食 / ルオ族 |
研究概要 |
ケニア西部ビクトリア湖岸で、土壌侵食(ガリー侵食)が住民の生活を脅かす大きな環境破壊となっている地域を調査対象地とし、農学(土壌肥料、作物、農業経済)、地質学及び文化人類学の専門分野を異にする学際的な研究チームで引き続き調査研究を行った。1967年の航空写真を精査した結果、ガリー侵食が規模は小さいもののすでに起こっていることが確認できた。ガリー侵食の現地で互いに近傍に生育するユーカリの根がネット状に絡み合い、組織の一部が融合し、周囲の土壌が侵食を受けて根が裸になっても融合した近傍の個体から水分や養分の供給を受けて生育を続けている状況が観察された。ユーカリは生育が早く、侵食抑制に対する効果の検証が重要であることが分かった。ガリー侵食が起こる集水域で放牧家畜の往来によって作られるフットパスが降雨時に表面流去水の流水経路となることが観察されたので、表面流去の方向と集水域内にある圃場毎の傾斜度および土地被覆の状況から降雨時の土壌侵食予測マップ作成の可能性を追究することとした。地域住民に対する危険予報として提案することを考えている。流去水を畝のある水田(天水田)に貯留して土壌侵食を抑制し、同時に貯留水を有効に利用してイネを栽培する圃場試験を試みたが、天候不順のため降雨不足となり次年度に再試験することとした。 社会経済的な調査の結果、住民ルオの社会には、現代のケニア社会が抱える問題の縮図が影を落としていることが観察された。すなわち、住民はコミュニティー意識や敬老の意識を失いつつあり、住民を一つにまとめることが難しい状況にあることが分かった。住民独自のルオ語と若者が教育を受ける英語というコミュニケーションツールの違い、その地に残る者と都会に働きに出る者の違いなどによって意識の違いが出てきているように思われた。そこで、本研究の結果を住民に報告し、土壌侵食対策をとる場合、住民のどの構成層を対象にすることが適切かと言えば、若者を対象とするのがよく、ジェンダーについては今後の検討として残された。また、調査対象地の集水域の中下流域にはルオ族が住んでいるが、上流域にはキプシギスがいるので、キプシギス地域から流去水が発生することを考えれば、両種族の関係を改善し、問題意識を共有させることが現実的には最も重要であるのではないかと推察された。
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