研究課題/領域番号 |
20255009
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅沼 修一 名古屋大学, 農学国際教育協力研究センター, 教授 (60159374)
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研究分担者 |
木村 眞人 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20092190)
竹谷 裕之 名古屋産業科学研究所, 部局なし, 上席研究員 (10023491)
山内 章 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30230303)
佐々木 重洋 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (00293275)
槇原 大悟 名古屋大学, 農学国際教育協力研究センター, 准教授 (70452183)
桂田 祐介 名古屋大学, 博物館, 特任助教 (40456710)
星野 光雄 名古屋大学, 環境学研究科, 名誉教授 (40023626)
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キーワード | 人間生活環境 / 保全農業 / 地域環境管理 / 地域文化 / ガリー侵食 / ルオ族 |
研究概要 |
ケニア西部ビクトリア湖岸で、土壌侵食(ガリー侵食)が住民の生活を脅かす大きな環境破壊となっている地域を調査対象地とし、農学(土壌肥料、作物、農業経済)、地質学及び文化人類学の専門分野を異にする学際的な研究チームで引き続き調査研究を行った。根が絡み合い土壌侵食の抑制効果があると推察したユーカリの根は、周囲の土壌が流出しても互いに支え合っていることが確認されたが、根の組織の融合についてはまだ確証が得られていない。QuickBird衛星画像の解析から、2004年から2009年の5年間でガリー侵食集水域内の人工建造物が約1.6倍に増加し、等高線に沿った線状の裸地がより顕著になっていることが推察された。この裸地は地上での観察から牛道であることが確認され、強度の降雨の場合にはこの牛道に沿って表面流去が起こっていたので、この水の流れを変えることによってガリー侵食を軽減できるのではないかと思われる。昨年降雨不足のため再試験となった栽培管理の違いによる水バランスとイネの生育を調査する圃場試験の結果、地面を平にして稲わらマルチをすることによって流去水が軽減され、表層土の水分含量が高くなり生育が良くなる傾向であることを観察した。 農業社会経済的アンケート調査の結果、土壌侵食防止には、政府等外からの支援を待つのではなく、住民自身(農民)の自発性を呼び起こし地域的な取り組みに広げることが重要であり、それには防止の技術研修が大事である。クワ、スコップ、ナタのような簡単な道具しか持たない農民でも実施できる農学的手法の研修が効果的であろう。また、地縁的集団には継続性があまりないので血縁集団を中心とした地域的な広がりがより効果的ではないかと思われる。対象地で飼われている家畜は現金収入が極めて少ない農家の家計にとって重要な収入源であるので、土壌侵食防止の観点からは、過放牧にならないような飼育方策が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査は順調に進んでいる。農家家計調査は事前調査の段階で広域を調査し、データをもとに詳細調査対象農家を絞った。詳細調査も実施済みである。但し、データ解析がやや遅れているので、注力する必要があると認識している。 土壌侵食防止に係る保全農業技術の開発を目指して現地でトライアルを行うことを当初計画していたが、地域住民(農民)意識やそのニーズに合う技術でなければ受け入れられないことが、これまでの多くの技術協力事例で分かっているので、地域研究による住民理解に優先的に取り組んだ。その結果、候補技術についてケニアの共同研究相手であるマセノ大学構内の傾斜圃場で試験したが、現地で試験するところまでは進まなかった。 土壌侵食地域の土壌調査と化学分析による土壌の特徴付けは終了し、既に論文として発表した。また、GIS手法によるガリー侵食地域の植生変化や集水域内の水の動きの解析は順調に進んでいる。現在取りまとめ中である。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト期間はあと1年である。最終年は、ケニア国内で土壌侵食対策の先進地と言われているマチャコス地域の調査を日本とケニアの合同チームメンバーで行い、そこでの実践例を現在の調査対象地域の住民に紹介する予定である。また、それぞれの課題についてこれまでに得られたデータを解析し、取りまとめに向かう。とりまとめた結果については、共同研究相手機関であるマセノ大学でワークショップを開催してマセノ大学の研究者と検討を深め、その後で、現地の住民に対してワークショップ等を開催して報告し、住民の意見を最終報告に生かす計画である。
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