研究概要 |
世界25ケ国60地域を超える地域で24時間尿を採取し栄養のバイオマーカーと生活習慣病のリスクとの関係を分析した結果、食生活の都市化、工業化によるグローバリゼーションが生活習慣病のリスク、即ちメタボリック症候群(メタボ)を増加させていることが明らかになった。とりわけリスクの増加が顕著なアジア地域住民に注目し、アフリカで生まれた人類の祖先がオーストラリアのアボリジニに到るまでの広がりの中で保有したと想定される倹約遺伝子と環境因子との関係を分析し、生活習慣病の予知・予防の栄養学を開発するのが本研究の目的である。 第1、2年度のアボリジニとインドネシア山間部マジャレンガ(M)村に続き、第3年度はインドネシアの都市バンドン(B)市の住民と倹約遺伝子の人類史の上では異なる背景を有し、メタボの増加が明らかになっているブラジル住民の中でも最も長寿になったベラノポリス(V)村とカチョエリーナ(C)市で健診を実施した。 その結果、B市住民の食塩感受性遺伝子、GNB3の多型は、ヨーロッパ人と異なり、CC,CT,TT型で血圧には影響しないが、食塩摂取量が1日8g以下の群に比べ10g以上の群ではTT型でLDLコレステロール、中性脂肪が有意に高いことを証明した。実験的にも高食塩摂取が高脂血症の原因となることを確かめており、食塩感受性がその発症に遺伝的にも関与することを示唆している。さらに、VはC集団と比較し、動脈硬化のリスク低減につながるHDLの高値、動脈硬化指数LDL/HDLの低値、中性脂肪、ホモシテイン(HC)、血糖値が低値、肥満度も低く、血圧値は高いにも拘わらず心拍数は明らかに低いことなどが明らかになり、ブラジル住民における長寿因子として脂質、糖質代謝の影響が大きく、HCの低値などからVにおける野菜・果物の充分に摂取がリスクの低減に貢献している事が明らかになった。
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